言葉の威力

カウンセリングの成否は言葉の使い方1つで大きく明暗が分かれます。

 

その重大さ、緻密さ、影響力の大きさは、皆さんの想像を遥かに超えるレベルです。

 

カウンセラーが口にする言葉や表現、その一つ一つによってカウンセリングの流れが大きく変わります。

 

カウンセリングを15年以上続けてきて、私は人間が口にする言葉の威力の大きさを日々実感しています。

 

そしてその言葉の重みと威力を傾聴スキルセミナーなどで受講者の皆さんに様々な形でお見せしてきました。

 ロープレや逐語記録を用いて具体的に言葉の威力の大きさを理解してもらうのです。

例えば次の言葉の違い、皆さんはお分かりになるでしょうか?

「悲しいのね」

「悲しいよね」

両者は文字にすると一文字しか違いません。

しかしこのたった一文字の違いの大きさをよく知っている人は少ないのです。

ちなみにこの両者の表現、共感と言えるのはどちらかお分かりですか?

 

みなさんは「悲しいのね」が共感だと思いますか?それとも「悲しいよね」が共感だと思いますか?

 

いったいどちらが共感的理解につながる表現なのでしょう。

実は、このような基本的な言葉の使い方すら現在のカウンセリングの学習機関では学べなくなってしまったのが実態です。片方は共感的理解の表現になりますが、片方は全く別物の表現になってしまうのです。

当然、共感的理解とは別物の表現を多用することで、カウンセリングが失敗する確率は上がります。

 

みなさんはどちらが共感的理解の表現だと思いますか?

 

これは本当に基本的な、カウンセリングのいろはと言えるレベルのテーマです。

この言葉の違いを知らないようであれば、カウンセリングはとてもおぼつかないものになっているといってもいいでしょう。

ちなみに、もう一つの表現は共感ではなく「同感」を伝える表現です。

両者の違いを知らないということは、共感と同感の違いすら抑えられていないということになります。

よく見られるのは、共感と同感の区別がつかず、本人は共感しているつもりでも、実はずっと同感を続けていると言う場面です。

カウンセリングでこのような過ちを続けていると、クライエントの精神状態は良くなるどころか、かえって悪化する危険性すらあるのです。それほど大きな違いが、この一文字の違いにはあるのです。

共感的理解がどういうものか本当の意味でわかっている臨床家であれば、この違いは一貫して意識しながら言葉を使い分けていくはずです。つまり、力のあるカウンセラーであれば絶対に同感を多用するなどと言う事はありえないのです。そして共感的理解を主軸にカウンセリングを進めているはずです。

 

カウンセリングと言うのはこれほどまでに言葉の威力というものを重視し、上手に活用していくものなのです。