2021年に実施する健診を準備する際の留意点

2021年に実施する健診を準備する際の留意点を解説します。ご参考になれば幸いです。

 

企業でできる対策

☆施設健診の場合、各施設の対策を確認し、実施時期をできるだけ分散させる。

☆巡回型健診の場合、会場における時間と空間の「密」を避ける。

☆予定どおり実施できなくなった場合に何をするか決めておく。

 

施設健診(各従業員が施設を訪問して健診を受ける形態)

<健診施設に確認しておきたい8つのポイント>

□受診者の体調確認をどのように行っているか?

□受診者間、受診者と職員の距離の確保をどのように行っているか?

□室内の換気をどのように行っているか?

□受診者の「密集」を避けるため、1日の予約者数、予約時間等をどのように調整しているか?

□受診者を含む複数の人の手が触れる場所の消毒を行っているか?

□健診施設職員の体調確認をどのように行っているか?

□健診施設職員に新型コロナウイルス感染症の陽性者が生じた場合、どのように対応するか?

□受診者に新型コロナウイルス感染症を疑う検査結果が判明した場合、どのように対応するか?

 

施設健診の場合、会場における感染防止策は施設側に委ねられます。実際に健診を委託する施設がどのような対策をとっているか、一度は尋ねてみることをお勧めします。担当者が医学・医療に関する専門家でなくても、企業側が感染拡大防止を意識していることは健診施設に伝わります。

 

巡回型健診(健診施設のスタッフがバス等で事業場を訪問して健診を実施する形態)

□できるだけ広くて換気のしやすい会場を確保し、定員を設定する。

□体調不良などで予定日に受けられなかった人への代替案を準備しておく。

 

巡回型健診における留意点として真っ先に挙げられるのは会場の確保です。各検査ブースだけでなく検査待ちの場所を含めて人と人との距離を確保できるか、マスク着用や仕切りの設置でそこにいる人からの飛沫拡散を抑えられるか、

外気を取り入れて換気できるかを検討し、レイアウトを決定します。また、一度に会場に入れる人数、それを上回った場合の待機場所も決めておきます。発熱や咳などの体調不良がある従業員は、健診の受診以前に出勤そのものを控えてもらいたいところです。ただし、巡回型健診の日程はどうしても限られるため、もし従業員にとって健診が「外せない用事」と思われてしまうと、無理に出勤するきっかけになってしまうおそれが想定されます。例えば「巡回型健診を受けられなかった人は後日の施設健診を案内する」などの代替案を準備した上で、体調不良時には出勤しないよう再周知しましょう。

 

予定どおり実施できなくなった場合への備え

 

□有害業務に従事する者の健康診断を優先する。

□入手できる情報をもとに、就業上の措置の確認・見直しを行う。

 

数か月前から健診の準備をしても、実施が近づいた時期にその地域で感染が急激に拡大してしまった場合など、

予定どおり実施できない事態も起こりえます。労働安全衛生法第66条の5では、事業者に対して、労働者の健診結果と実情を踏まえた就業上の措置を義務づけています。ここでいう「就業上の措置」とは、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮のように個人を直接対象とするものだけでなく、作業環境測定の実施、施設の整備のように職場環境を対象とするものの両方が含まれます。

 

すなわち、労働安全衛生法に基づく健診は、働く人の健康と安全を守るための適切な配慮を主な目的として義務づけられています。もし健診を実施できる日数および人数が予定よりも減ってしまった場合は、一定の有害業務に従事する労働者を対象とする特殊健診(有機溶剤、特定化学物質など)やじん肺健診(じん肺法)を優先して実施します。

さらに、前回までの健診結果あるいは傷病休職などの事情により、就業制限等(例:残業や深夜勤務の制限、車両・クレーン運転作業の制限)の対象となっている従業員については、健診が予定どおり実施できなくても、入手できる範囲の情報から措置内容の確認・見直しをしておきましょう。